(矢崎総業株式会社 代表取締役副社長 戦略事業担当(AI デジタル・モビリティ・スマートシティ))
矢崎総業は長らく自動車業界に携わってきましたが、業界は今、CASE(*1)、MaaS(*2)に代表される「100年に一度」とも言われる大変革期にあります。その中で「いまAI・デジタルに取り組まなければ、ゲームチェンジが起きた後にプレイヤーでいられなくなる」という強い危機感がありました。
また、矢崎総業は静岡県裾野市に本社や開発拠点を置き、「終身雇用」「家族主義」という理念のもとに活動してきました。その良さは十分理解する一方、変化に対応するためには多様性のある組織が必要と考え、AI・デジタル室を、人と情報が集まりやすい東京・品川に創設しました。
*1.メルセデス・ベンツが今後の自動車のあるべき姿として2016年に提唱。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字に由来
*2.「Mobility as a Service」移動すること自体をサービスととらえる考え方
デジタルタコグラフ、ドライブレコーダーについては、50年にわたる運送業者様・バス業者様とのお付き合いで培った品質・信頼関係・販売網があります。AIに取り組む前提として、潜在価値の高い生データが集まってくる基盤が、既に出来上がっていたのです。解析対象となるデータの質の高さと量の多さは、他社との差別化という意味で、大きなポイントです。
また、自動車産業のほかに、矢崎エナジーシステムにおいては電線・ガスメーターなどの分野でも確かな足跡を残してきました。こうした、広範囲にわたる「デバイスに紐付いたデータ」を集められるのが、矢崎総業の強みです。
こうした強固な基盤に、外部からAIの専門家たちが入ることで、例えば、「ガスメーターのデータをマーケティングに使おう」といった新しい発想が出てくる。幸い、AI・デジタル室にはその道の実力者たちが集まりつつあります。ここで自由闊達に意見を交わしながらプロジェクトを進め、これまで矢崎総業が培ってきた各分野に「新しい文化」を入れていきたい。
矢崎総業の社是である「世界とともにある企業」「社会から必要とされる企業」の実現です。AIはあくまでそのためのツール。ですから、提供するサービスの方向性は何でも良いのですが、「社会に貢献するものを作る」というのは、絶対に押さえたいポイントです。私は、AIを活用することで「より良い社会」を作りたい。
AIを使ったサービスを提供することで、皆さんに「感謝される」ことが目標です。すると、自然と私たちの周りに笑顔が増えます。AIはビジネス面だけでなく、「笑顔」を増やすためのツールだと考えています。